むげん道中ひとり旅

~むげんの旅路めぐり~

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にせもの : 2021年5月26日 <むらさわぎ~花畑のたねたち>




更新履歴

●にせもの:(2021年5月26日-初出2016年12月7日)

●注意書きの多い踏切:(2019年10月28日)
●不通路線の厳しい事情:(2018年8月6日)
●通り過ぎる電車:(2018年6月26日)
●軽い検査が教えてくれたこと:(2018年6月23日)
●むらの公共放送:(2018年6月22日)

●すれちがいだらけ:(2018年6月8日)
●村法~高速道路の法より・抜粋:(2018年5月11日)
●訪問販売いろいろ:(2018年4月5日)
●いつもより早い開花:(2018年3月18日)
●追いかけてくるウェブ広告、すぐ先の未来に待ち構える世界:(2018年3月18日)

にせもの

「最近、隣のむらむらで にせものが増えてるらしい」
「バッグとか時計とか?
 それなら昔からだろ」

「そういうのじゃなくて、
 あるむらじゃ、役場の出張機関がにせものだったらしい

 それで にせの証明書を発行して詐欺を働いていたそうだ
 しかも10年も

「それはすごいな、
 でもなぜ10年も にせものが存在できたんだ??
 すぐにわからなかったのか?」

「そのむらじゃ『(だまされた)被害者が恥ずかしかったから』じゃないかといってるみたいだ」

「ほかのむらでは、銀行がにせものだったという話もあったな」

「にせニュースも増えてるから、気をつけないとな」

「役場も銀行もにせものなんて、なにを信じたらいいんだ?」

「そのうち役場や銀行も認証が必要になるんじゃないか」

「じゃあ認証機関のにせものがでてくるかもな」

(改2021年5月26日-初出2016年12月7日)

注意書きの多い踏切・踏切を渡る前に

彼らは線路の手前にある柵のわきに立っていた

柵の切れ目は約2メートル

「歩くこともできるし自転車も走れるが車は走ってはいけない」

という注意書きがある

柵の向こうには数十本以上のレールが横たわっている

「線路は20本くらいある」

と注意書きにある

「踏切の長さは100メートルくらいだろう」

ともある

向こう側の柵がちょっと遠くにみえる

「渡りたければ渡るがいい」

注意書きはなかなか挑戦的な文言になってきた

「ここには警報器はない」

「遮断機もない」

「非常ボタンもない」

なにかテーマパークのお化け屋敷を思い出させるような言葉をかけられる

「左右をよく確認し注意して渡らなければいけない」

「列車がきたら止まれ」

「くれぐれも線路で止まってはいけない」

「列車に通行優先権がある」

立て続けに注意を受ける

「それでも渡るのか?」

ここで念押しされる

「1000メートルを惜しまず歩けば警報機や遮断機もある踏切がある」

「そこなら安心して渡ることができるだろう」

と提案された

「この踏切は向こう側に渡るには近道だ」

その通りだ

「安全を選ぶか」

「それとも便利を選ぶか」

と注意を促される

「よく考えるといい」

さらに熟考を求められる

そして彼らは踏切を渡り終えた


注意書きは線路ごとに立っている

気になるのは最後の注意書きは文字がかすれて読めないことだ

(2019年10月28日)



不通路線の厳しい事情

「北2号線といえば冬は運行停止している路線だよね」

「今は夏だから運行しているだろう」

「先月の大雨で一部の区間が不通になってるみたい」


「ふーん、全線で運行停止しているわけではないだろう?」

「それがね、ところどころ不通になってるからほぼ全線運行停止状態みたい」

「復旧の見通しは?」

「予算と応相談だって」

「じゃあしばらく無理だな」

「あ、あとね」
言葉を継ぐ

「寄付募集中

 ボランティア募集中
 ・・できれば重機操作できるとなお良し

 資材提供も随時受付中 だって」

「・・今年の復旧見込みはほぼないな・・」

(2018年8月6日)

通り過ぎる電車

ある日、電車を待っていた

しばらくすると彼方に影がうかび、電車の姿が見えた

どんどんと近づいてくる

しかし、なぜか電車の速度は落ちない

速度を維持したまま目の前を通過していった


「あれって 通過電車だっけ?」

「いや あれはここに停まるはずだけどな」

まわりもざわついている

「ジャックされたとか?」

「それなら警備システムが作動してるんじゃ」

「事故?」

「オーバーランどころじゃないからな・・」

すでに列車の姿も影も見えない

一見すると通過電車にしか見えない

「もし運転手が停まるの忘れて通過したとしても、もう戻ってこないだろうなあ」

「次の電車は停まるといいね」
とつぶやいた

・・その後

運転中に運転手が突然死し自動運転装置が作動し続けていたことが判明した

遠隔制御により電車が停止したのは3駅後のことだった

「運転手にも安全確認装置つけないとダメみたいだね」

(2018年6月26日)

軽い検査が教えてくれたこと

壁をながめている男がいる

その壁は男よりも50センチはさらに高そうだ

近くで見ればかなり圧迫感があるだろう

工事現場などにありがちなかわいらしい絵が描かれているがその壁の圧迫感にはかなわない

男は、一通り端から端まで眺めたあと、手に持っていた棒のような道具で壁を軽くたたいた

それも2.3回たたいてすぐやめた


その後、男はこう告げた

「壁は大丈夫そうですよ」

「本当に大丈夫ですか?
 危ないんじゃないかと指摘受けたんですけど」

「とりあえず目視したかぎり問題ないし、たたいてみたけど異常はないようですよ」

「簡単な検査だけで大丈夫ですか?」

「今日は別件でここに来てるんで壁の点検はついでなんですよねー」

「ついで・・
 とりあえずプロの目からみて大丈夫ということでいいですね?」
念押しするように男にきいた

「いやー自分 資格持ってないんで、プロではないですよ」


その後 その壁には赤テープが張られ、
危険!近寄りすぎるな!」と注意書きが付け加えられた

男が教えてくれたのは
自分の身は自分で守らないといけない・・ということだけだった

(2018年6月23日)

むらの公共放送

「おはようございます
 今年も残すところ だいたい半分

 みなさん 今日が無事に過ごせるともかぎりません
 悔いのない一日を過ごしてください」

壁にかかる受信機から無表情な放送員が淡々と告げる

むらの公共放送は日の出から日没まで
毎時0分からはじまり、言うことがなければ5分、
たくさん話しても30分くらいで終わる

ニュース以外には短いドラマやバラエティ、娯楽、音楽、
もあるにはある

あるだけといったほうがいい

当然、夜間はきちんと休み
季節に応じて放送回数も変わる

災害時は放送員や放送機材の安全確保のため休み 再開予定は努力目標となる

「むらの少ない税金でやりくりしているのでやれるところまでやります」

それが口癖だ

そのため、放送途中に終わるときもある

放送事故じゃない
予算が尽きただけだ

(2018年6月22日)

すれちがいだらけ

「もしもし」

「はい?」

「あのね・・電車がこない、ずっと待ってるんだけど」

「ふーん、事故?」

「わからない、
 昨日も遅れてたし
 おとといは駅から500メートル過ぎて止まったし
 その前は、不具合でいくつか運休していたし・・」

しばらく話したあと、思いついたように言った

「もしかしたら少し早く電車が行ったのかも
 それなら次のを待つしかないね」

「どした?」
電話を切るとテーブルの向こうから声がかかった

「電車が遅れてるらしい
 いくら待ってもこないって」

「どこ?」

「さあ 聞かなかった」

「誰から?」

「知ってる声かと思ったけどどうも知らない声だった気がする」

壁にかかる四角い受信機には、運転士の体調不良による電車の運休情報が流れていた

(2018年6月8日)

村法~高速道路の法より・抜粋~

厳密な速度規制レーン

レーンごとに走行できる速度は定められており、それ以下でもそれ以上の速度でも走行してはいけません
(戦争、事故、災害、渋滞時、その他村独自のやむを得ない事情を除く)

違反した場合は罰金刑、繰り返し違反者には懲役刑が科せられます

逆走は犯罪行為

逆走は逆走車の運転者の重大な過失とし懲役刑、
逆走車により直接被害を受けた関係者は損害賠償を求める権利を有します

高速道路は車両優先

徒歩や軽車両の利用も問いませんがあくまで自己責任とします

その他 付記事項

運転に自信のないものは無制限補償の保険契約をしたり、自動運転車を利用するなど対策を講じる義務があります

なお自動運転車が事故を起こした場合の責任はすべて車の所有者に帰属します

(2018年5月11日)

訪問販売いろいろ

「こんにちは~」

「どちらさま?」

「お忙しいところすみません
 不用品の買い取りサービスで各ご家庭を訪問しております」

「不用品?
 生ものでもいいの?」

「いえ、生ものは日持ちしないので買い取りしておりません
 お客様、ご使用されなくなった貴金属などはお持ちでありませんか?」

「あるかもしれないけど」

「よろしければ買い取りさせていただきます
 見せていただけませんか?」

「うーん・・」

「ご利用されていない貴金属はお売りいただければお金にかわります
 お客様がお好きなものを買うことができますよ」

「・・それが・・
 ネックレスがあったと思うけど、最後にみたのが30年くらい前で・・どこに行ったかわからないのよね~
 もしかしたらおじいさんが売っちゃったかも・・」

男は心の中で舌打ちしながら
「あーそれは残念ですね
 ああそうだ、お布団の点検サービスもいたしておりますよ」

「布団の点検?」

「ええ、古いお布団はダニが繁殖しやすく健康被害が増えやすくなるんですよ
 当社が取り扱うお布団は体にまったく害のない防ダニ加工をしたものです
 ちょっとお高いですが、このお布団にかえてぐっすり眠れるようになったと評判です
 いかがです?」

「うちは布団クリーニングしてるから大丈夫よ」

「家のなかで羽アリや白アリを見かけたりしませんか?
 意外に多いんですよ
 見つけても放置されている方
 でも羽アリや白アリを放置しておくと床や壁が傷んで大変なことになります
 一度お宅のなかを拝見させていただけませんか?」

「うちはこのあいだの水害で浸水してそのときに業者にいろいろみてもらったから大丈夫ね」

「投資に興味はありますか?
 いまは銀行にお金を眠らせておくだけでは増えませんからね
 将来有望な値上がり株を買っておくといいですよ」

「確実に値上がりする株なんてないでしょ?」

「いやいやありますよ
 お客様だけに特別にご紹介することができます」

「本当に?」

「ええ」

「じゃあ、念書書いてもらえる?」

「・・印鑑ないから出直しますね」

悪質商法対策に・・

「やりとりの録音(録画)させていただきますね」

(2018年4月5日)

いつもより早い開花

「開花宣言が出始めたね」

「今年はいつもよりかなり早いらしい」

「原因は冬の厳しい寒さかあ・・
 そのあと暖かい日が続いて順調に開花したと」

「開花が早いのはいいけど気になるのはつぎの夏の暑さかな
 冬の寒さが厳しいほど夏の暑さも厳しくなる
 長期予報もそれらしいのがでてたような気がするけど?」

「寒波も熱波も極端になってきてるからね
 このままだと暑さで住めなくなる地域もでてくるっていう話もあったね」

「これから先は、開花時期も変わってくるかも」

「むらで一番の早咲きはもう終わったよね?」

「あそこは冬のあいだに満開になる気の早い種類だからね」

(2018年3月18日)

追いかけてくるウェブ広告、すぐ先の未来に待ち構える世界

「またでてきた~」
ぼやくように言う

「なにが?」

「このあいだ検索したサイトの広告が、ポータルサイトとかどのサイトの広告にも表示されてしつこい」

「ああ 結構続くね、それ」

「自分だけならいいけど家族とか他も共有してると 内容によってはみられたくないと思うよね」

「うんうん、
 育毛剤とか、〇Dとか、〇〇マニュアルとか いろいろ」




「でも関連サイトの広告ならともかく、検索したサイトそのものの広告じゃあ意味ないんじゃない?」

「関連サイトの広告がなかったか
 (分類のなかで)その広告の入札価格が一番高かったからとかじゃないか」

「検索したサイト以外にもこういう似たようなサイトもあるよというカンジのほうがいい」

「いい悪いはそれぞれだよね
 そのしくみを知らないと気持ち悪いだけだし」




「あるサービスを無償提供する引き換えとして本人の行動情報を提供するっていうのもある」

「無料サービスのサイトは多いからそれらを利用するのと引き換えにそうなるのか
 サービスは無料でも提供している側にはコストがかかっていると考えればなにかしらの代償は求められるということ?」

「それで得た情報をもとに広告が端末などに表示される
 集積された情報はどんどん精度を上げていくだろうから個人の欲求やニーズにぴったりあった、時には深層心理を突いた広告も表示されるようになるかもしれない」

「提供する行動情報、個人情報によっては個人を特定されることもありうるってこと?」

「ふだんの行動から吸い上げられる膨大な情報は、些細なものから重大なものまで本人固有の情報を与え続けるだろうな
 そうなってくると広告うんぬんよりその情報をもとに特定された個人たちが政府機関とかに監視される道具のほうに価値がかわってくるかも」

(2018年3月18日)

後日談:当時はすぐ先の未来と書いたがもう実現しているかも



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